とても小さな植物の苔、誰もが一度は見たことがあると思います。
森の中や渓流など自然豊かな場所に生えているイメージがありますよね。木の表面や岩の表面などに力強く生える姿を見るとなんだか気持ちが落ち着くような感じがします。
そんな苔ですが、古くから観葉植物のお供としてよく使われており、意外にも身近な存在です。伝統的な日本庭園や、盆栽の土台などを飾る姿は落ち着いたわびさびの良さを感じさせますよね。
最近ではテラリウムや苔玉など新しい楽しみ方が生まれ、より身近に苔を感じることができるのではないでしょうか。
今回のコラムでは、そんな苔の代表的な種類とその育て方についてご紹介していきます。
■ 代表的な種類
1. スナゴケ
スナゴケは星のような形が特徴で、可愛らしく人気のある種類です。
日蔭が好きな苔ですが、その中でも比較的直射日光に強く、乾燥にも強いため育てやすい部類です。初心者の方に特におすすめです。
2. タマゴケ
葉と葉の間から伸びる真ん丸の胞子体が特徴的な苔です。胞子体の中心が徐々に赤くなり、目玉のように見える時があります。少し不気味な感じがしますが、ぴょこぴょこと生える姿がとても可愛らしいです。英語圏では「apple moss」とも呼ばれています。
湿気の多い環境を好むため水やりを多めに行いますが、水に浸かるのは苦手なので注意しましょう。
3. ホソバオキナゴケ
人気のあるメジャーな種類で、細い葉が無数に広がる芝生のような姿が特徴です。
盆栽の装飾としてよく使われており、「山苔」とも呼ばれることもあります。
常に水に触れるような過湿な環境が苦手で、黒ずんで痛むことがあります。乾燥には強いため、乾かし気味の管理がおすすめです。
4. ミズゴケ
ミズゴケは水辺や湿地など、常に湿っているような環境を好む苔です。ホームセンターや100円ショップなどでも乾燥ミズゴケが売られており、手軽に手に入れることができます。
植物の植え込み材や、テラリウムや苔玉にも使用されるかなりメジャーな苔で、乾燥にさえ気を付ければ、そうそう枯れる心配がありません。
育てやすい種類なので、初心者の方におすすめです。
5. シノブゴケ
シノブゴケは無数に枝分かれした小さなシダのような姿が特徴の苔です。ボリュームのある姿で見応えがあります。
乾燥に弱く、湿気のある環境を好みますが、高湿度下では徒長しやすいため美しい姿を保とうとすると少々管理が難しい種類かもしれません。
それでも繊細で美しい姿はとても魅力的なので、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
■ テラリウムについて
テラリウムはガラスの容器の中で動植物などを育てて鑑賞する手法で、おしゃれな見た目なので、インテリアとしても楽しめます。苔をメインにしたテラリウムも人気があり、「コケリウム」とも呼ばれています。
テラリウムで主に使われる苔の種類は、タマゴケ、ホソバオキナゴケ、ヒノキゴケ、ハイゴケ、ミズゴケ、シノブゴケなどがあり、いずれも湿気を好み育てやすい品種が多いです。
苔テラリウムの管理:苔テラリウムは少ない水やりで育てられるため管理が比較的容易です。
水やりは苔の表面が乾き始めたのを目安に霧吹きで行います。およそ2週間に1回くらいと言われていますが、苔の状況を見ながら行うのが良いでしょう。
また、月に1回、ソイルに水差しなどで水を与えます。注意するポイントとして、水の入れ過ぎで苔が水に浸からないようにしましょう。苔が痛む原因になります。
■ 苔玉について
苔玉はボール状の土に苔を巻き付けて育てる手法で、マリモのような可愛らしさと盆栽のような雰囲気が魅力の1つです。
苔玉を土に見立てて植物を植える「苔玉仕立て」の商品も人気があり、植物だけの時とは違った苔ならではの雰囲気を感じられます。
苔玉によく使われる苔の種類は、ハイゴケ、シノブゴケ、コツボゴケなどがあり、テグスなどで苔を土に固定する関係上、葉が細かすぎず、丈夫で崩れにくい苔が多いです。
苔玉の管理:底穴のある皿状の鉢や受皿などに置いて管理します。底に水が溜まらないようにしましょう。置き場所は屋外の風通しの良い、明るい半日陰の場所が適しています。室内で育てている場合も、数日おきに屋外に出してあげると元気に育ちます。
水やりは苔が乾いてきたのを目安に週1~2回くらいの頻度で行います。
水やりの際は苔玉全体にしっかりと水がいきわたるよう、水を貯めたバケツなどの容器に苔玉を沈めて、気泡が出てこなくなるまでゆっくりと水を吸わせます。目安は10分くらいです。
■ まとめ
苔は森や渓流などの自然の中はもちろん、街中や住宅街など私たちの身の回りでも力強く生きる姿を見せてくれます。バラやチューチップのような華やかさはないですが、その落ち着いた色や姿は私たちの心を静め、日常の喧騒を忘れさせてくれます。日本ならではのわびさびの文化とも密接な関りがある苔。ぜひあなたも、苔を日常に取り入れて苔ならではの和の風情を感じてみませんか?