バオバブの木を初めて見ると、思わず「どうしてこんな形なんだろう」と首をかしげてしまいます。枝はまるで根のように空に広がり、太い幹はずんぐりと膨らんでいる。アフリカでは昔から、この不思議な姿を見て「神が怒って木を逆さに植えた」と語り伝えられてきました。
見た目こそ奇抜ですが、バオバブはとても理にかなった生き方をしています。乾いたサバンナでは、長いあいだ雨が降らないことも珍しくありません。そのため、幹の中に大量の水を蓄え、乾季を静かにやり過ごすのです。一見すると変わった姿も、生きるための知恵のかたちなのです。
鉢植えのバオバブも、その小さな体にそんな物語を秘めています。ぷっくりとした幹や、ゆったりと伸びる枝を見ていると、どこか穏やかな気持ちになります。「逆さまに見えることのなかにも、ちゃんと理由があるのかもしれない」 そんなことを教えてくれる、ちょっと不思議な木です。